2章 みんなで館内を満喫するよ~♪

3/10
前へ
/43ページ
次へ
「……これは、一度山から離れた方がいいでパシャね……」  建さんの提案に、カナカナ以外の全員が大きく頷きました。 「じゃあ逆に、こんなものを読んでみたいとかあるでパシャか?」 「ハナは学園青春モノを読みたいでし!」 「じゃあバンド組んで、衝突しつつも仲間と成長していくような王道ストーリーにするっキュ」  おハナの呼びかけに、いっかちゃんは首からさげたエレキギターをかき鳴らして応えます。 「イメージ膨らませるために、一曲演奏してみたいっキュ。エブスター、おハナにもギターを用意してほしいっキュ」  いっかちゃんが振り返って、エブスターに頼みました。  それまでみんなの様子をニコニコしながら見守っていたエブスターは「ここで演奏するでスタ?」と驚いていましたが、それが創作の為であるならと了承し、すぐにおハナのためにアコースティックギターを持って来てくれました。  いっかちゃんは普段からエレキギターで活動しているほどの腕の持ち主なのですが、おハナもなかなかのものなのですよ。  二匹はギターを持ったお互いの姿を見つめ合い、満足げに笑いました。 「おハナとこうやって共演するのは夢だったキュ」 「ハナもでし」 「よーし、せっかくバブルなところに集まっているんだから、ここはあの曲しかないっキュ」 「そうでしね!」  二人は頷き合いました。  そして奏で始めたのはアップテンポな『ダンシングヒーロー』  最近になって高校生がバブリーダンスを披露したことで再ブレイクした曲です。  そしてここにいるどうぶつさんたちったら、実はこの曲が流れ始めた当初からよく知っている世代なのです。  だからイントロを聞いただけでみんなの目が輝きます。 「これは踊るでぇ! 踊るしかないやんけ!!」  珠姐ぇは丸っこい体を揺らして情熱的なステップを踏み、建さんもエブスターに頼んでマラカスを出してもらったりして。  いっちぃとアキたんも演奏する二人と一緒に歌って盛り上がっていますし、どんな時でも泰然自若としている千さんの体でさえ、心なしか揺れている……?? 18a34641-0842-4da3-b5e5-b6f4e727b3a2 「……はぁ。やっぱり音楽はいいでしね」  楽しい演奏を終えた後、興奮気味のおハナは、可愛い尻尾を振りながら言いました。 「学園モノだといろんな人を出せるから、合作するには向いているかもしれないでし」 「そうビエね。いろんな人……じゃあ学園探偵とかも出したいビエ」  いっちぃの口から探偵という単語が出たことで、珠姐ぇはふと思い出したようです。 「そういえばおハナは探偵ものをエブリスタで書いたことあったやん。名探偵サヨリン」 「あぁ、書いたでし」  おハナはにっこり笑って頷きました。 「サヨリンはどんな不思議な事件も華麗に解決する名探偵なんでし」 「それなら、名探偵サヨリンが湯けむり殺人事件をズバっと解決する話も盛り込むでニャ!」 「湯けむり……それは学園モノから一気に遠ざかるでし」 「あははは、ここには温泉があるから、ついうっかり……でニャ」  テーマから脱線させてしまったと苦笑するアキたんでしたが「でも早く温泉に入りたいでニャ」とも言います。  アキたんはこの『フォレストヴィラ・ゆざわ』に温泉施設がついているのを知っているので、楽しみで仕方ないのです。  そんなアキたんの意見に、珠姐ぇも大いに賛成しました。 「そやなぁ。そらぁバブルな『フォレストヴィラ・ゆざわ』なんやから、さぞかし豪華な温泉を用意してるんやろし。ほな、エブスター。そろそろ温泉に案内してんか」 「え? でも合作は……?」 「そんなん温泉入りながらゆっくり考えるわ。急いだってしゃあないし」 「で、でも……」 「まぁええやんけ。このコミュニティフロアの良さはよく分かったし、建さんもしっかり写真撮ってくれはったし、もう十分やろ」  珠姐ぇは戸惑うエブスターの背中を押し、すぐそこに見えていたエレベーターへと強引に連れて行ったのでした。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加