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俺は闇の情報屋。いわゆる裏社会の情報屋というやつだ。
俺がこの仕事を始めた理由は―――
ずばり!女性にモテたいからだ!!
「それなのになんでモテないんだ……。」
裏社会の情報屋、かっこよくないか?俺の幼馴染だって一緒にアニメを見てた時に裏社会の情報屋キャラにハマってたじゃないか……。
あれか。現実ではモテるのは安定した収入で安全な仕事をしてるやつなのか。なんだそれ。裏社会の情報屋、全くの正反対なのでは?
現実に打ちひしがれた俺が向かうのは、裏社会の人が御用達のかっこいいバー……ではなく、
「今日のパンの耳も美味いな。」
「当たり前でしょ。誰が焼いたと思ってるの?」
幼馴染の経営しているパン屋である。
ポカポカした雰囲気のパン屋で、幼馴染サービスのパンの耳を食べる。これが俺の至福のひととき……。
かっこつかないのは俺が一番分かってる。何も言うな……。
「はい。パンの耳ばっかりじゃ栄養が偏るからね。」
そう言って幼馴染が出してくれたのはパンの耳を使ったグラタン。パンの耳以外に牛乳やほうれん草、鶏肉などが入っている。余りものなのかもしれないが、ありがたくいただく。
「うん。美味しい。」
「あ、当たり前でしょ!うちはカフェメニューもやってるんだから!!」
ホッとする美味しさに、幼馴染と結婚したら幸せになれるだろうなと、ふと思う。だが口に出す勇気は無かった。
ずっと前から言えない言葉がそんなにすんなり出てくると思うなよ。
「やれやれ。どうして収入も不安定な闇の情報屋?とかになったんだか。」
俺がこの仕事を始めた原因が、お手上げという風にため息をつく。
その姿を見ながら俺は心の中で叫んだ。
俺がこの仕事を始めた理由
「ねえねえ!この闇の情報屋のキャラ、めっちゃかっこいいね!!」
―――だってお前がそう言ったから!!
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