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舌裏を舐め上げ、上顎を擽り、嚥下しきれない唾液を攪拌する。擦れ合う濡れた感触に煽られ、息継ぎすら惜しいように、執拗に彼の体温を求め続ける。
「んっ……くれ、しっ……ん、ぅ……っ」
口端からこぼれた雫が、彼の首筋へと線を描く。河原が堪えかねたように目を瞑る。
目端の紅潮は色を増し、時折垣間見える瞳はひどく潤んでいた。けれども、それは単に息苦しさと――せいぜいアルコールによるものだ。
そう頭ではわかっているのに、容易に錯覚してしまいそうになる。
だって鼻に抜ける吐息はこんなにも甘い。甘く聞こえる。
共有する熱は着実に温度を上げて――そう感じられて、
(もう、無理だ)
ここまできて、やめるなんてできない。
今更もう、止まらない。
(河原……お前に触れたい)
口に出せない想いを心の中で呟きながら、気がつくと俺は、これ以上ないくらいに高揚していた。
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