*7.引き金を引いたのは

17/23

333人が本棚に入れています
本棚に追加
/316ページ
「何って、見ればわかるだろ」 「わ、わか……、っ!」  俺はその肩先に唇で触れ、そのまま押さえつけるようにしながら、肌蹴させた素肌へと淡い痕を刻む。初めて触れる河原の肌は、思っていたより柔らかく、仄かに甘く感じられた。 「……」 「え、ぇ……っあ!」  俺は胸元へと這わせた指で、不意打ちのように小さな突起を探り当てる。  河原は自分の漏らした声に驚いたように、慌てて唇を引き結んだ。  そんな河原の反応に、その声に、心臓がどくんと大きく脈打つ。  今頃酒が回ってきたのだろうか。次第に頭の中が霞がかり、呼吸まで浅くなっていく。 「お前、ここ……」  ……感じるのか。  掠れた声で囁きながら、俺はささやかに隆起した突起(それ)を摘まみ上げる。 「っ……! や、ぁ……離……っ」  河原の喉がひく、と鳴った。制しようと発した声と共に、呼吸が跳ねた。    確かめるように他方の突起にも舌を伸ばし、あえて音を立ててそれを口に含む。先端を甘噛みしながら周囲を擽るように舌先で辿り、その傍ら、 「ほら……」  忘れるって言えよ。早く。  吐息混じりに促せば、それすら刺激となったように彼の背筋が戦慄いた。 「あ、ぁ、待って……なぁ、もっと、わかるように……っ」 「わからなくていいから、言うこと聞けよ」 「そん、なの……っ」  なおも河原は首を縦に振らない。会わないとは言わない。忘れるとその場しのぎの嘘もつかない。  河原がそういう男だと知っているのに、俺は思うようにいかないもどかしさにますます焦燥する。 「あいつはもう、お前の思うようなやつじゃない。関わらない方がいい」 「だから、その理由を……」  理由なんて、言えるはずない。  お前のこと、いつかの俺みたいにさせたくないからだなんて――。  束の間俺が動きを止めると、河原はほっとしたように言葉を継いだ。 「さっきも、話したけど……将人くんは、俺の――」
/316ページ

最初のコメントを投稿しよう!

333人が本棚に入れています
本棚に追加