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将人くん……って。
その名を耳にするだけで、一気に頭に血が上る。
呼ぶんじゃねぇよ、その口で――。
かっとなった俺は、胸元に置いていた手を急くように下方へと滑らせて、
「えっ、わ、――ぅあ!」
狼狽する河原を尻目に、その下腹部を唐突に押さえ込んだ。
服越しながらも、まるで思いがけない場所に刺激を受けて、河原の身体がびくりと震える。そこに更に力を込めれば、逃げ場もないのに腰が退けて、反動で突き出すみたいな格好になる。
「ちょっ……、ど、どこ触……っ」
遅れて状況を把握したらしい河原の顔が、これ以上ないほど赤くなった。
ずっと動かなかった一方の手が、金縛りでも解けたかのように俺の腕へと伸びてくる。そのまま俺の袖を掴み、何とか引き剥がそうと力が込められる。
「どこって……」
けれども、俺はそれに動じることなく、ただゆるりと顔を上げる。再度彼の耳元へと唇を寄せ、
「……はっきり言われてぇのか」
耳殻に鼻先を触れさせたまま囁けば、彼は首を竦めるようにして顔を背けた。返事はなかった。
俺は離れた距離だけ舌を伸ばし、淡く染まる耳朶をすくい上げながら、吐息をそっと吹きかける。擽るように舌先を差し入れれば、「ひぁっ」と微かな声を上げて、一瞬その肩から力が抜けた。……どうやら耳も弱いらしい。
顔を背けられたのをいいことに、俺はさらされた側の肩口に顔を埋め、首筋から鎖骨へと、口付けながら下りていく。
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