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(……またかよ)
見慣れた天井を眺めながら、漏らした溜息は半ば無意識だった。
更衣室の一角には、スタッフの休憩スペースとして大きめのソファが置かれ、その前にはガラス板のローテーブルが設置されている。天板の上には定位置のようにスチール製の灰皿が載っており、その傍らに俺は私物である煙草とライターを転がしていた。
その日の休憩中、俺はその広い座面にだらりと横たわり、何度も同じことを考えていた。
いったい、いつになったら消えてくれるのか。もう一年も前の話だと言うのに、いまだに痛む胸が忌々しい。
こうならないようにと深入りすることなく縁を切ったつもりでいたのに、これではまるで手遅れだったみたいじゃないか。
(いや、そんなわけ……)
自嘲するように否定してみても、なかなか気持ちは切り替えられない。
俺は再び溜息を吐いて、眠りたいように目を閉じた。
唇で挟んでいるだけの煙草の紫煙が、そんな胸中を反映するかのように、ゆらゆらと揺れていた。
「暮科ぁ、店長が呼んでるよー!」
と、急に扉の開く音がして、続けざまに聞きなれた声が耳に届く。
俺は気怠げに身体を起こすと、くわえていた煙草を灰皿に押し付けた。
ドアの隙間から顔を覗かせていたのは、同僚の木崎だった。
「何の用だって?」
「さぁ、それは聞いてないけど……とりあえず、休憩中悪いけど、とは言ってたよ」
悪いと思うなら後にしてくれねぇかな……。
喉まで出かかった言葉を飲み込んで、俺は間もなく部屋を後にした。
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