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終業時間間近となり、何気なく厨房に顔を覗かせると、シンク前に並んで立つ河原と木崎の姿が目に入った。
そう言えば、片付けの間に合っていない汚れ物が山のようになっていた気がする。
普段は主に厨房のスタッフが、隙間隙間で片付けてくれているのだが、今日はいつもに増して忙しかった上に、人手も足りていなかったせいだろう。そこまで手が回りきらなかったらしく、オーダーがストップしてから、慌てて取りかかった河原のヘルプに、先に手の空いた木崎が入ってくれたようだった。
「――そう、そうなの!」
「そっか……それは良かったなぁ」
隣り合って手を動かしながら、二人は時折顔を見合わせ、くすくすと笑っていた。仕事中ということもあり、声は潜められていたものの、その妙に楽しそうな様子は嫌でも伝わってきてしまう。
「………」
とたんに俺は胸の辺りにもやもやとしたものを感じて、思わず沈黙する。
……何なんだ。
何なんだ俺は。
こんなの、ただ俺より先に木崎の手が空いたってだけのことじゃないか。二人が仲いいのは今に始まったことじゃないし、そもそも木崎の距離の近さは誰とだってあんなものだ。
(それなのに、何でこんな……)
もやもやというか……苛々というか。
考えれば考えるほどいっそう複雑な気分になりそうで、俺はいたたまれないように再びホールへと踵を返した。
……これ以上、よけいな思いに囚われてしまわないように。
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