3.近いようで……

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 *  *  * (――まだ話してんのかよ)  就業時間が過ぎると、スタッフの姿はたちまちなくなる。特に遅番は時間も時間だし、終電を気にする者もいるためそれが顕著だ。  ちなみに木崎はマンションも近く、自転車通勤だったが、それでもだいたいが人と会うだとか電話があるだとかを理由に、とっとと帰ってしまうことが多かった。  ……なのにその木崎が、今夜はまだ残っている。  厨房ではいまだ河原と木崎が話し込んでいて、俺は仕方なくホールの照明を落とした後、バックルームからも直接出入りできるカウンター席に腰を下ろした。  既にBGMも切ってあるため、シンと静まりかえった店内に木崎の声が聞こえてくる。そうでなくとも通る声だ。はっきり内容まではわからないが、その声が弾んでいるのは確かめるまでもなかった。 (……まぁ、少し待つか)  俺は密やかに息をつき、目の前の天板に持っていたクリアファイルを静かに置いた。カウンター付近は防犯のために明度が残してあるため、作業するにも支障はない。  ファイルから取り出した資料は二種類。一方の表紙に書かれていたのは〝クリスマスキャンペーン〟そしてもう一方には〝年始キャンペーン〟と書かれている。終業時間の少し前に、明日のシフトに関する話と共に、冴子さんに渡されたものだった。 (ハロウィンが終わったと思ったら……もうクリスマス……年始)  その文字を目で辿るたび、嫌でも時の流れの早さを感じてしまう。 (ほんと早ぇな……)  俺は心の中で呟きながら、気だるげにその表紙をめくった。
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