3.近いようで……

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 *  *  * (……いま、何時だ)  一通り目を通しておいて欲しいと言われてはいたが、さすがにここで全ては無理だろうと思っていた。せいぜい数分程度の時間しかない――それくらいには木崎の話も終わるだろうと踏んでいたからだ。  なのに、気がつけば見ていたのは最終ページで、俺ははっとして顔を上げる。  店内に飾られているアンティークの時計を見ると、既に三十分近くが経過していた。  さすがにこれ以上単なる私用で(何の理由もなく)残っているわけにはいかない。俺のは一応仕事とも言えるが、だからと言って今日残ってまで読めとは言われていないのだから。 「お前ら、そろそろ――」  俺は広げていた書類を手早くファイルに戻すと、それで軽く肩を叩きながら厨房へと続く扉を開けた。そして開けるなりそう声をかけたものの、 「あ、終わった?」  予想に反して、そこにいたのは河原一人だけだった。  河原は待っていたように俺の方へと向き直り、「お疲れさま」と破顔した。
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