348人が本棚に入れています
本棚に追加
河原の気持ちはありがたかった。だけど、それではだめなのだ。
単に彼がホールに出られないからだけじゃない。それだと――俺と河原の休みを入れ替えたのでは、結局時間が合わないからだ。
確かに休みはすぐにでも欲しい。けれども、俺がいま、何より欲しいと思っているのは、休みは休みでも彼と共に過ごせる休みなのだ。
だってもう三ヶ月が経とうとしている。最後に河原と二人きりで飲んだ日から――一度も休みが被らないまま、そしてこれからも当面その予定がないなんて……。
どちらかの部屋で、時間を気にせず飲むだけ飲んで、翌日だらだらと他愛もない一日を過ごす。あの時間が恋しくてたまらない。
最悪、いつかのように俺が河原を叩き起こせば……とも思うけれど、そこまでして彼との時間を持ちたいと言えるだけの口実もない。
やはり基本的には翌日がそろって休みの日にしか誘えない……今までだってずっとそうだったから。
「なかなか一緒に飲めないなぁ」
なのに河原は、そのタイミングでそんなことを言い出した。
ぎくりと肩が揺れそうになるほど驚いた俺は、それでも慌てて口を開こうとしたけれど、
「でも、ここのとこ皆疲れてるし、下手なことして、店に迷惑がかかってもあれだよな……」
まるでそれを遮るみたいに、先に結論を出されてしまう。
俺は言いかけた言葉を飲み込んで、再び口を閉ざすしかなかった。
着替えを終えたのち、ジャケットを羽織り、自身のロッカーをパタンと閉める。やり場のない思いが反映してしまったのか、心なしか大きな音が響いたが、河原はまるで気付いていないようだった。
最初のコメントを投稿しよう!