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俺より高い――180後半はあるだろう――身長に、肩下まで伸ばした金色の髪。そしてすらりとしたスタイルなどは、遠目に見る分には見間違えても仕方ないくらいの印象があった。
とはいえ、間近で見ると結構違っていたため、今となってはそこまで気にしてもいないのだが、それでも多少なりとも凪いでいる記憶を逆撫でされる感じはするので、できればあまり視界に入れたくない相手でもあった。
(って……まさかそいつとってわけじゃねぇよな?)
幸か不幸か、木崎の恋愛対象が同性というところまでは知らないらしく、河原の中でそこは結びついていないようだった。
けれども、あり得ないことではない気もしていささか不安になってしまう。
木崎は今までにも何度か客と付き合ったことがある。そしてそこからストーカー紛いのトラブルに発展し、仕方なく俺が仲裁に入ったこともあるのだ。
いや……マジで。
やっぱりあの客だけはやめてほしい。
心の中でぼやく俺とは裏腹に、河原は変わらない調子で続ける。
「っていうか、結果的には木崎が目標としてた、クリスマスまでにってやつ? それにもちゃんと間に合ったわけだしさ……」
クリスマスまでにはまだ日があるから、どうなるかは分かんねぇけどな。
言ってやりたかったが、河原があまりに平和そうに笑うのでやめておいた。
「ほんとすごいよ……有言実行」
しみじみとこぼすその表情は、いつにも増して柔らかかった。純粋に心から感心し、祝福しているのが伝わってくる。
(……すごいのはお前だよ)
俺は密やかに苦笑する。
俺からすれば、今までどれだけ話を聞いていたにしろ、そこまで自分のことのように――あるいはそれ以上に――喜んでやれるお前の方が、よっぽどすごいと思う。
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