4.さざなみ

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「はぁ……」  疲れる……。  思わず深く長い息が漏れる。  木崎の後ろには、あと一人だけ休憩を控えているスタッフがいた。  俺は今日は30分単位で2回、取れるときにとることにしているからまだいいとしても、木崎の次のスタッフは少し前に入ったばかりの学生のバイトだ。やっと一人前に動けるようになったところだというのに、こんなことで不満を(いだ)かせるわけにはいかない。こんなばたついた現状で辞められでもしたら、それこそまた俺の休みが……。 (まぁ、もう少ししたら河原が来るし……)  遅番のシフトは15時からなので、木崎の休憩が終わる頃にはその顔も見られるはずだ。そうすればこのやさぐれた心もきっと少しは慰められる。  何気なく視線をやった天井近く(明かり取り)の窓からは青空が覗いていた。今日は雲が少ないから、見える星も多いかも知れない。深夜に仕事を終える河原は、きっと今日もそんな夜空を眺めながら帰るのだろう。……俺の横で、いつもそうしているように。今夜もせめて、その隣を歩ければ良かった。  ふとしたことで、そんな思っても仕方ないことばかりが頭を過る。 (……いや、仕事だ仕事)  これでは木崎のことが言えなくなる。  キッチンに戻ると、ちょうどホットコーヒーが用意されたところだった。俺はそれを持っていたトレイに載せ、添えられていた伝票を確認しながらホールへと続く扉を抜けた。  *  * (げ……これ、木崎が注文取ってきたテーブルかよ)  どうにか思考を切り替えたはいいけれど、次には再び気分が下降していた。  ホールに出るなり、伝票に書かれていたテーブルを目視(確認)すると、そこに座っていたのは、例の常連客(金髪男)。  俺はとっさに視線を逸らしながらも、結局はしぶしぶながらも指定のテーブルへと足を進めるしかなかった。  だって今更引き返すことなんてできないし、分かっていたら別のスタッフに行ってもらったのに、などと思っても後の祭りだ……。
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