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(……つーか…………)
何でよりによって見城なんだよ。
こんなの最初から勝負は見えている。
俺が言うのもなんだけど、あいつに本気で口説かれて落ちない相手はいないだろう……。そう思えるような男なのだ。
俺とは違って躊躇もないし、当たり前のように相手の懐へと入り込む巧みさもある。
今日だって、久々に再会した日だってそうだった。彼は迷わず俺に声をかけてきて、結果、俺は彼の車でこんなところまで――。
(土曜ならって、言ってたっけ……)
窓外を流れる景色をぼんやり見つめながら、俺は見城の言葉を思い返す。
さっきのやりとりでもう、河原がアリアいることはバレてしまった。となれば、これからますます彼は河原に会うために動くだろう。
基本河原はホールには出ないけれど……だからってそんなことを繰り返されたら、いつどこでばったり、なんてことにならないとも限らない。
そうなったら……。そうなったらどうなってしまうのか。
俺はぎり、と歯噛みする。
少なくとも……河原は喜ぶだろうな。喜んで、そこから誘われれば容易にOKするだろう。
だって河原は元々見城に懐いていたんだから。……俺なんかよりずっと。
そこに断る理由はない。
(……会わせたくない)
会えばきっと絆される。顔を見れば、声を聞けば――河原はもう、彼のことしか見えなくなる。
想像するだけで息が詰まる。
俺は目を閉じ、小さく首を振った。
(――――渡したくない)
見城に渡すくらいなら、いっそどこかに閉じ込めてしまいたいと思うほど。誰の目にも触れないように閉じ込めて、鍵をかけて、俺だけのものにしてしまいたい――。
…………なんて、思うだけなら簡単なのにな。
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