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* * *
その更に一週間後の土曜日。どうせまた同じ時間帯にやってくるのだろうと思っていたら、意外にも見城は姿を現さなかった。
そんな中、俺は久々に河原から宅飲みに誘われる。
翌日は俺も河原も公休日で、その日は通常通りどちらも遅番だった。
心境としては受けてはいけない気もしたのだ。だけど、本音では俺だって誘いたい気持ちはあったから……。
どちらかの家で、ゆっくり、のんびり二人きりで過ごすあの時間は何ものにも変えがたい。
……思えば、断ることはできなかった。
見城の顔を見なくて済んだということもあり、少々気が緩んでいたのかもしれない。木崎も休みだったため、話題に上ることもなかったし。
* *
終業後、俺は一旦部屋に戻り、シャワーを済ませ、部屋着に着替えてから河原の部屋に向かった。
帰り際にコンビニで買った酒や食べ物は、先に河原が部屋に持って上がってくれていた。
扉の前に立つと、インターホンを押そうとして……試しにそのままドアノブに手をかけてみた。案の定、鍵はかかっていなかった。
(だから……ほんと不用心だな)
相手を確認せずにドアを開けたり、恐らく今回はすぐに俺が来るからということで施錠していなかったのだろうが、それにしたってすでに30分以上は過ぎている。
そんなこといちいち心配しなくても、河原は大の大人、しかも男だ。
そう頭ではわかっているものの、河原のこととなるとどうにも気になって仕方ない。
(これも過保護っていうのか……?)
俺は自嘲めいた溜息を落とし、ひとまず中に入った。
「かわは――」
そうして声をかけようとした時、
「俺のこと?」
不意にそんな言葉が聞こえてきて、俺はそこで足を止めた。
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