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独り言にしては随分大きい……。
(電話中か)
察した俺は、そのまま廊下を進むべきか一瞬迷う。
リビングまではほんの数歩の距離だ。だが今なら河原に気づかれる前に、何食わぬ顔して出直すこともできる。
ここで通話が終わるまで待っていても河原は気にしないだろうが、場合によっては盗み聞きしているようにも思えるのが本意じゃなかった。
「長身で、金髪で……?」
けれども、次いで聞こえてきた声にはっとする。しかもそこで河原は何かに手を取られたのか、スピーカーに切り替えてしまった。
おかげで相手の声も丸聞こえで、俺はますます縫い留められたように動けなくなる。
「ていうか、それって前から木崎が言ってた人だろ? 友達になったっていう……」
「あ、そっちじゃなくて。最近来るようになった方の金髪の人」
「金髪……最近? ……や、でも俺、やっぱりそんな派手な知り合いいないと思う……」
内容からも、聞こえてきた声からも話している相手が木崎だということはすぐに分かった。
そしてその〝金髪〟が誰を指しているのかも――。
確信すると同時に、どくんと大きく鼓動が跳ねる。
すぐにでも端末を取り上げ、通話を切ってしまいたかったが、そんなことをすれば盗み聞きしていたと自らばらすことになるし、確実に何か隠していると勘付かれてしまう。……特に木崎に。
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