*7.引き金を引いたのは

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「でもさぁ、河原の名前知ってたんだよね。フルネーム。あ、もちろん俺は何も教えてないよ?」 「そう、なんだ……? ……じゃあ、やっぱり知り合い、なのかな」  心臓が身体ごと揺らすように拍動する。  もうやめろと言いそうになる口を努めて引き結ぶ。 「……じゃないかなぁ? わざわざ俺に外で声かけてきたくらいだし……。ていうか、ほんと河原のことよく知ってそうな感じがしたんだよね」 「えー……誰だろ。全然分からない……」  ごそごそと継続的に動いていた河原の気配がぴたりと止まる。そのまま考え込むような沈黙が落ちる。  河原が答えを導き出す前に、どうにか誤魔化せないだろうか。  この期に及んで思うけれど、今更どうにかできるわけもない。 (くそ……木崎のやつ、よけいなことを)  ややして、先に口を開いたのは木崎だった。 「……まぁ、それでさ。実は頼みごとがあるんだよね」 「頼みごと?」 「うん。もしさ? もし……ほんとに河原が彼と知り合いだったとして……ちゃんと再会できたらさ? そしたらぜひ、俺にも紹介してもらえたらなぁなんて――」 (はぁ?!)  今度こそ声を上げてしまうところだった。  っていうか木崎(お前)の本題はそこかよ! 冗談じゃねぇ……!  俺はとっさに自分の口を押さえ、押さえながらも、気がつくとリビングへと踏み込んでいた。
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