*7.引き金を引いたのは

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「あ、くれし……」 「あの金髪は見城将人(けんじょうまさと)っていう俳優だよ。気になるなら後は自分で調べろ」  きょとんとした顔で俺を見返してきた河原を視界の端に、はっきりそう言い捨てる。  すると一瞬の間ののち、木崎は音が割れるほど高い声を響かせた。 「えっ、え? 暮科?! えぇっ、あの人芸能人なの?!」  俺がいたことも、内容も、恐らくはそのどちらにも驚いたのだろう。驚いて、かと思うと一気にテンションを上げて、早口にまくし立ててくる。 「っていうか、何で暮科がそんなこと知ってんの? そういうのそんな詳しかったっけ? ――あ! そう言えば以前(むかし)暮科の部屋に外国の雑誌あったよね?! あれってそういうこと?! 日本で有名な人じゃないもんね……?!」  あぁもう、うるせぇ……!  ……っていうか、雑誌置いてたの相当前だし、それがすぐ浮かぶとか、そもそもそれ自体しっかりチェックしてたとかマジ何なのこいつ……。ただ他の本と一緒に、ラックに置いていただけなのに。 「うるっせぇ。後は自分で調べろっつっただろうが。話がそれだけならもう切るぞ」  言うなり俺は、まだ何か言いかけていた木崎を無視して、勝手に通話を終了させた。 (あいつ……マジねぇわ)  無意識にため息をついてしまう。そうして、その表示が通常の待ち受け画面に戻ったころ、横からぽつりと呟く声がした。 「見城……」  俺ははっとして顔を上げた。 「見城、将人……」  反芻するように繰り返した河原の表情は、まるで信じ難いように、けれども、次第に花開いていくみたいに綻んでいった。
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