あなたは誰? 【5分で読めるシリーズ】

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外は猛吹雪。 俺たちは登山家。 険しい山を登るのが大好きだ。 よく趣味で仲間と山に登っている。 小人数だが、男の俺たちに、女の子が一人混ざっていた小人数のグループだ。 今日は特に予報では晴れると言っていたが、さすがは自然だけあって、この日は吹雪いた。 「おい、大丈夫か?」 「これはやばいな」 「とりあえず、避難小屋まで頑張れ」 「絶対、はぐれるなよ」 「はぁい。」 外は真っ白で体がかじかむ。 視界も何も、全く先が見えない。 霧の中にいる感覚だ。 行く道を外れれば死ぬ 「大丈夫か?」 「おう、ついて来ているから大丈夫だ」 「私も大丈夫」 「良かった。俺も大丈夫だ」 俺たちは声を頼りに逸れていないか確かめ合った。 登山をするなら必ず避難小屋の確認は必須だ。 やっとついた。 俺たちは、小さな小屋で、縮こまって温まった。 捲きに火をくべる。 火が体を温め、そして一部屋しかない暗い小屋を照らしてくれた。 小さいとはいっても、7~8畳ぐらいはあるだろうか。 俺たちはそこで楽しく語り合って夜を明かすことにした。 今が何時なのかは知らないが、とりあえず、吹雪が収まって外が晴れていたら朝だ。 「じゃあさ、怖い話でもするか」 メンバーの一人がお決まりのような事を言いだす。 「えぇ~、怖い、こんな日だし止めようよ」 そんな会話だったのに、怖い話は始まっていた。 俺たち登山を趣味でやっている奴らにも、色々と怪奇現象のうわさはある。 こんな暗い時間に山奥にいるんだ。そういった現象が起こったとしても、おかしくは無いと言えばそうとも思える。 なんせ避難小屋はその見た目最中、結構出そうな見た目だ。 まぁ、信じてなどはいないが、話が始まるとなぜか耳を立ててしまう。 この手の話しの不思議なところだ。 で、登山家たちの間では絶対に入ってはいけない小屋があるのだとか。 それは俺たちにも伝わるほど、有名なホラー話だ。 「でね、」 「もうー、止めてよ。そんなの知ってるよ。 有名でしょ。その話は」 「だよな。じゃあ、とっておきの奴。 最後に絶対ビビんなよ。 はなしてる俺も鳥肌立つやつだけど」 俺たちはその前置きに息を飲んで聞いた。 「ある登山家のグループがいたんだよ。 彼らは4人で山を登ったんだけど、それは下山した時のこと。 彼らの持ってきていたコンパスが壊れて、道に迷ってしまったらしいんだ。 それで、来た道を引き返すつもりで下って行ったんだけど、歩けど、歩けど、地上に着かず、日が落ちてきそうになった。 で、このままでは、体力も消耗するし、遭難しても大変だからと、どこかでキャンプをするつもりだったところに、小屋があったんだ。 それがあの有名な例の小屋。 畜蕪木(ちくぶぎ)小屋だ」 「でた。登山好きの間で有名な心霊話~」 「いや、これは別に怖がらせようとして掛けたわけじゃないぞ。 でもこの話がもとで、その小屋が登山家の間でも有名になったんだとか」 「へぇ~そうなんだ。 じゃあ原点なんだね」 「そうなるな」 「なんか俺たちの状況と似てるって言えば似てるな」 「ほんとだな」 「ちょっと、やめてよぉ!」 彼女の反応を楽しみながら、俺たちは会話を弾ませていた。 「で、丁度小屋も俺たちが今いるところと同じような感じで、7~8畳くらいの一室だった。 4人は上がって夜を明かそうとしたんだけど、山の夜は特に冷えたみたい。 あんまりにも冷えて寒いから、彼らは温まろうと、部屋の四隅に一人ずつ立って、体を動かして夜の寒さをしのごうとしたんだ。 その方法が、まず最初に、四隅の一人が右隣の角へ真直ぐ走って、角で立つ人の所まで行く。 そしたらその人にタッチして、次はタッチされた、その角の人が、また時計回りに次の四隅の角に立つ人の所まで走る。 後はこれの繰り返し。四隅の角に着いたら、立ってる人にタッチしてまた時計回りに、次の角に立ってる人の所までタッチされた人が行く。 これをずっと繰り返したんだって。 こうして、部屋の中をぐるぐるぐるぐる回って、夜が明けた彼らは、そのまま小屋を出て帰って行ったってお話」 「は?」 「で?」  二人はオチが聞けず呆気に取られていた。 「えっ?  何その反応?君ら怖くないの?」 「いや、今のの何が怖いんだよ」 「そうだよ~。ちゃんと帰って行ってるし。  全然無事だったじゃん。  何も起こってないし」 「お前そういう、怖い話しようとして、実は全然怖い話じゃないですって、笑い取ろうとするの止めろよな」 「本当に~。 雰囲気だだ潰れじゃん」 俺たち二人は笑った。 「はっ?  何言ってんの?  怖いじゃん」 「どこがだよ」 だけど語っていた彼一人だけは違った。 「じゃあ、実際やってみよう。そうすればわかる。  お前ら、ほんとに知らないぞ」 まるで待ってました。と言わんばかりに。 俺たちは彼の誘導の元、一人ずつ四隅に立って同じように走ってみた。 まずは言い出した親友からスタートして、順番に時計周りに回る。 角に着いたら、待機していた人にタッチして待っていた人が次の角を目指す。 ただそれだけじゃん。 そして俺も順番道理、次の四隅の角を目指そうとしたけど、…… ここで終わった。 「あれ?いない」 「そう言いう事。気づいた?」 俺たちは鳥肌が立った。 回れるとおもっていたのに、回れないのだ。 だって誰も居ないから。 四隅に一人づつ立って、最初の一人が隣の角へ移動する。 移動した人が角に来たら次は自分が右隣りの角に移動する。 そうすると四番目に走る人は、一番最初にスタートした人の角を目指して走ることになるのだが、一番最初に動いた人は、2番目の角で待機している状態になる。だからスタート時点の角には誰もいないのだ。 つまり、これだと、4人目が走り出した時点で、最初の位置には人が立っていないので、タッチして送り出す人がおらず、終了してしまう。 ぐるぐると回していく事ができないのだ。 「そう。だから、おかしいんだよ。  もし彼らが四人で四隅に立っていたのだとすると、朝までぐるぐる回り続ける事なんて出来ないんだよ。  でも、彼らは朝までこれを続けられた。  な。怖いだろ。  つまり、彼らのほかに誰かがそこに居なければ不可能なんだよ。これ」 俺たちは体が固まった。 鳥肌モノではなかった。   もし想像できないなら、紙に書いてみるか、   人がいれば家でもやってみてほしい。   ただ、やった後、ぐるぐる回れると思っていると、本当に鳥肌が立つ。 「つまり知らない誰かがいたん…」 「もう嫌ぁ!止めて!」 「おい、お前、さすがにもう止めろ。それ以上言うな。 それ冗談抜きでやばいって」 そいつは笑いながら、そうだろうと言ったが、本人もやっぱり怖かったみたいで、 「楽しい話しよっか」 と言ってきて、恋愛話や失敗談の話しに切り替わり、俺たちは夜を明かした。 外は快晴になっていて、そのまま無事俺たちは下山した。 とんだ、災難だったが、 風呂に入って、昨日の事を思い出しながらゆっくり漬かっていた。 ―――――――――――――――…………、 ちょっとまて、おかしくないか? 違和感に気づいた。 俺は飛び上がって、俺たちが行っていた場所を調べた。 恐ろしい事だ。 そして学校に着くと俺は2人を集めた。 「なぁ、昨日俺たちヤバい事になってたんだけど、お前ら今まで何ともなかったか?」 「え?何急に、どうしたの~?」 「本当だよ。 なんだ? もしかして一昨日の俺の心霊話が怖すぎて、仕返しか」 「いや、違うよ。 本当にやばいって」 「何がヤバいの?」 「一昨日は本当に、俺たち3人だけだったよな?」 「いつもそうだろう。 他に誰がいるんだよ」 二人は可笑(おか)しな話を切り出され、不思議そうに首をひねっていた。 「俺たち怪談話して、四隅に立った時の事覚えてるか?」 「え?  何、もしかして、あれってやったらヤバイやつだったの?」 「いや、違うよ。俺たち確かめる為に、四隅に確かに1人ずつ立ったよな」 「あ。そうだよ」 「で、ちゃんとみんな配置に着いたの確認して、走り出したよな?」 「あぁ、だから何?」 「俺たち3人しかいないはずなのに、どうして四隅に立てるんだ?」 彼らは黙った。 「俺らと一緒に回っていた奴は……誰なんだよ」 二人は目を見開いていた。 後で調べて分かった事なのだが、俺たちが泊まった小屋の名は『畜蕪木小屋』だった。
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