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幸せのおすそ分け
「ごめんなさい、もう、本当に無理だから。」
ハッピーエンドはどこにあるのか?
大人になるにつれ
永遠の愛は幻想なのかと現実を知る事が増えていく。
「楓、別れる何て言わないで」
今私に泣きついているこの男は、社会的には成功者といえる立派な大人だ。
一度は大好きだった人になり振り構わず縋られているのに
微塵も心が痛まない自分は、相当可愛くないと思う。
「ごめんなさい。」
私が怒りを抑えた笑顔で答えると
涙目で縋ってきている彼が、引きつった泣き顔でイヤイヤと首を振る。
「だって、楓は全然させてくれないし。オレだって健全な男だからどこかで発散しないと。」
なんて持論を展開する。
確かに、フライトが立て込んでて中々会えない時期もあったけど。
彼の独りよがりな行為が苦痛で、でも傷つけたくなくて。
話し合いすら避けてたのは私だけれど。
「でも、1番愛してるのは楓だよ。」
そう言いながら私を抱き寄せる。
浮気するなら、私と別れてから好きに遊んで欲しいと思う。
薄っぺらい愛の囁きで何とかなるとでも思っているのだろうか。
私も男を見る目なさすぎだし、桜井の言う通りロクな男じゃなかった。
でも、私だって話し合う事から逃げていたんだから彼だって辛かったのかもしれない。
極上の営業スマイルを顔に貼り付け、抱きしめる腕を擦り抜けてこう言った。
「とにかくもう貴方とは二度と会わないから。どうか幸せになって。」
そう言ってわずか半年の付き合いだった元カレとさよならしたのが先週末の事。
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