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「おはよう」
キラキラと輝く太陽の光が、リビングの窓から差し込むのを背に
仏壇のお父さんとお母さんに手を合わせて挨拶をする
「また、帰ってくるからそれまで見守っててね」
そう言って、しばらく静かに手を合わせる。
(2人とも生きてたら、桜井の告白を聞いてきっと笑って祝福してくれたんだろうな)
「楓ちゃん、少しでいいから、一緒に食べよう」
そう言って、健人くんはいい香りのする温かい紅茶と、カットしたフルーツをダイニングテーブルに
並べてくれる。
「ありがとう、じゃあいただこうかな」
そう言って向かい合って座る。
「いただきます」と言って、りんごと、綺麗にカットしてある青切りみかんがお皿の上に乗っている
のに気づく。
「楓ちゃん、みかん好きだったよね」
そう言って昔のままの笑顔で優しく包み込んでくれる。
こうしていると、本当に温かい気持ちになって。
「覚えててくれたんだ」
泣きそうになりながら、お礼を言って。
この温かい時間は、あの辛い出来事を乗り越えようとしていた時期には本当にありがたかった。
……でも……
「健人くん」
改まって、そう切り出してみれば
頷いて先を促してくれる。
「健人くんには、幸せになってもらいたいんだ」
この先は、いつものパターンだって分かっているけれど、言わないわけにはいかない。
「楓ちゃん、ありがとう。それ以上は言わなくても分かってるし、俺の答えも変わらないよ」
そう言って遮られる。
(この家とサロンに縛られずに自由に、幸せになって欲しい)
毎回するこのやりとりは、もう何年も平行線のまま。
「楓ちゃんはそんな事気にせずに」
そうやっていつも子供扱いしてくるのに。
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