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声のした方を見て胸が嫌な音を立てて騒ぎ出す。
「増田!お前も来てたの?」
とても可愛らしい、野球部マネージャーの増田香織さんがそこにいる。
井川くんを視線で追うようになってから、気づいた事がある。
彼をみると、必ず彼女の姿が近くにある。何より彼女の視線が恋してると一目でわかるそれなのだ。
多分、彼女も私が井川くんに恋してるって気付いてる。
「あー、先輩私とお祭り行こうって言ったのに、デートだったんですかぁ?」
相変わらず彼女は井川くんしかみてない。
「いや、デートとかじゃなくて、オレの友達と岡山さん達の4人で来たんだけど連れとはぐれちゃって。」
優しく笑う井川くん。多分桜井の名前を出すと、色々と騒ぎになると伏せてくれたらしい。
増田さんの醸し出す雰囲気の居心地が悪くて、逃げ出したい衝動に駆られる。
足が無意識に少し動き、下駄が小石を踏む音がやけに耳につく。
「えー、だったら一緒に探します?」
冗談ぽく言い出す増田さん。
笑顔で固まってしまった私に増田さんは笑いかける。
「バカ、いいよ。ごめんね、岡山さん。増田は友達が呼んでるみたいだよ。」
そこでやっと引き下がってくれた増田さん。
「明日は朝一で練習ですから、遅刻しないでくださいねー。」
と瞳の奥が笑ってない笑顔で去っていった。
あの子、すごく積極的で、それに
『可愛らしい』すごく女の子らしい。
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