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楓が金魚すくいに夢中になっている後ろで、ハルが
「ね、楓と井川君を2人にさせてあげよう」
と提案してきた。オレとしては嫌だったけど、そうも言えずハルの提案に乗った
今は、少し疲れたので祭りの人を避けて川沿いで休憩中。
沈黙が2人を包む。
オレがここ何日かかけて考えていた事を話そうと、口を開きかけた時
「優君。他に好きな人いるでしょ。」
とハルが前を見たまま話し始めた。その表情はとても穏やかだ。
オレの心臓が嫌な音を立てて騒ぎ出す。
いや、他に好きな人がいるのは、ハルだろ?
何も言えないオレを見て、笑うハル。
「ごめんね。私から付き合ってって言い出したから、中々言えなくて。」
繋いでいた手を離される。
「私にも他に好きな人がいるって気づいたんだ。
ううん。好きなのに素直になれず、優に逃げたんだ。」
申し訳無さそうに、見上げてくるハル。
「優くん、ううん、桜井もそうだよね?見てたら良く分かる。私と似てるから。」
全てを悟ったようなハルに何も言い訳出来ない。
そうだ、オレはきっと楓の事が
『好き』なんだと思う。だから
「ごめん」
ってハルに頭をさげる事しかできなかった。
「私達、友達に戻ろう。」
そう言ってハルは、いや長瀬は、今までで1番綺麗に笑った。
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