初恋

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「ありがとう、井川君。実は凄く痛かったんだ。」 嬉しさを噛みしめながら、そう言って素直に背中に乗る。 凄く広くて暖かい背中。 脱ぎ捨てた下駄まで井川君は器用に持ってくれてる。 「岡山さんって、我慢強いんだ。」 と優しい声で笑う彼。声が直接体に響いて、凄く近くに感じる。 私の高鳴る心臓の音がばれませんように。 「うーん確かに、友達にはそう言われる事が多いかも。」 心臓が壊れるんじゃ無いかってくらい高鳴り続けていて、このまま天に召されないかと本気で心配になる。 「でも我慢のしすぎは、辛いよね。今日だってこんなになるまで黙ってるし。」 そう言って苦笑する井川君はすごく優しい。 このまま時が止まればいいのに。 本気でそう思った。 重いだろうし遠回りになるからと途中で下ろしてくれと頼んでも、井川君は 「全然軽いし、大丈夫。女の子1人で危ないし、送らせてよ。」 と笑って言ってそうしなかった。 言葉通りに自宅まで送ってくれて 本当に井川くんは素敵な男の子だと自分の部屋のベッドの上で 1人ニヤけながら眠りへと落ちていく。 夢を見た。 井川くんが増田さんと付き合ってる夢。 ベッドの上で静かに目が覚めたとき、何だかこの恋は実りそうもないといつにも増して弱気になった。
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