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「そんな事、まだ告白もしてないのに分からないでしょ。」
思い切り舌をだして、顔をしかめると、桜井が大笑いし始めて。
何だか腹が立ってきたので、そのまま放置して、教室まで戻ることにする。
今日は部活もないし、早く帰っても良かったのだけれど。
どうしても井川君が見たくて一人でこっそり渡り廊下まで来てみたら。
ヤツに遭遇するとは、予想外で。
「じゃあね、桜井。私もう帰るから。」
最近、ハルと桜井は一緒に居ないし。喧嘩でもしたのかと思っていたのだけれど。
土曜日は、ハルと文乃も誘って何とか仲直りのきっかけを作ってみようかな。
「ちょっと、置いて帰るのかよ。」
桜井の声が追いかけて来るのが分かる。
私じゃなくてハルの所に行きなよ。振り返ってそう、声に出そうとした時に
渡り廊下の先にハルの姿を見つける。
いつもなら、満面の笑みで駆け寄ってくるのに、こちらに全然気付かずに通り過ぎていく。
その横顔はどこか思いつめたような表情で。
「ねぇ、桜井。ハルと喧嘩したの?」
あの夏祭りの日から、どこか距離のある2人。
気になって文乃に相談したけれど、そっとしておいた方がいいと諭されて。
そうしようと思っていた矢先に思わず口をついて出てしまった言葉。
「あっ、話しにくいなら、いいから。」
慌てて質問をなかったことにする。
「知りたい?」
急に真剣な眼差しで見つめられると、どうしていいのか分からない。
見つめていたいような、逃げ出したくなるような。
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