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「えっ、だって桜井はあの桜井でしかないし。今さらきゃー何てなったらどうよ?」
と言えば一瞬思案顔でいたかと思うと
「いや、ないわ」
と失礼極まりない一言を放つ。
「変わってなくて何よりね。」
と意地悪な笑みでこちらも応戦すれば
「お前もな」
と不敵に返される。
こんなやり取りも直接したのはいつぶりだろう。
元カレと付き合いだしてから会ってないから、かれこれ半年か。
気心知れた仲間と遠慮なく言葉を交わす。
学生時代から変わらない私の大好きな居場所。
たった半年会わなかっただけなのにもう何十年も会っていないような気がする。
ふと桜井が誰かを探すようにチラチラと視線を彷徨わせる。
「あ、ハルは今日来れないよ。」
ニヤニヤして爆弾を盛大に投下してやる。
途端にその麗しい顔が歪んで、赤くなる。
「念願だった外交官になって今はアメリカだもんね〜」
と追い討ちをかければ
「違うし。んで、長谷川は?」
と慌てて否定して、話題を変えてくる。
まぁおめでたい日にあまり虐めても可哀想か。とその話題に乗る。
「あぁ、二次会からだって。何か仕事が立て込んでて今飛行機でこっちへ向かってるみたい」
話題が逸れた事にホッとした様子の桜井が
「アイツが研究者なんてなぁ。今は新薬の開発だったっけ?」
と問いかけるのでうなずいて、桜井の手の中にあるシャンパングラスを奪って飲み干す。
「オイオイ、ったく酒癖は相変わらずか」
呆れ顔で肩をすくめられる。
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