22人が本棚に入れています
本棚に追加
「……誘ってる?」
少しだけ熱を孕んだ瞳で見下ろされながら身動きが取れないでいると
だんだん不安の方が勝ってきて。
「は??」
やっと素直に桜井の心配を、受け入れる事ができて。
「どうやったって男の力には勝てないだろ」
少しだけ困ったような、優しい瞳に捉えられたまま。
頷くことしかできない
「分かったから、もう、離して」
やっと解放されて、一息ついていると
「ただいまー」
母と健人くんがかえってきた。
「おかえりなさい、節子さん、健人くん」
なぜか桜井がお出迎えしてて、桜井ファンの母は
「きゃー、優くん!いらっしゃい!今夜はご飯食べていくでしょ」
と娘そっちのけで、ハイテンション。
さっきまでの真剣な眼差しは見る陰もなく、すっかりいつもの桜井。
何だか置いてけぼりの気持ちがとても不快で。
「お母さん、桜井も予定がある……」
「大丈夫よね?」
人の話を最後まで聞かないのは、いつもの事。
やれやれと健人君と顔を見合わせて、思わず吹き出してしまう。
「健人君、疲れたでしょう?今日は私が作るから」
そう言えば、優しく頭を撫でてくれて。
「ありがとう楓ちゃん」
いつも笑顔でお礼を言ってくれる、素敵なお兄さん。
すっかり機嫌が良くなったので、早速準備に取り掛かる事にする。
最初のコメントを投稿しよう!