青空の似合う人

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それぞれに一列に並びあいさつを交わす選手たち。 気のせいかと思ったけれど、相手選手数人がニヤけながら雑談しちゃってる……。 (強豪って言っても、これじゃ、あんまりだし) だんだんと夏の太陽が昇るにつれて、じんわりと熱くなる。 もう、井川くんはずっとピッチャーとして投げ続けてる。 「……すごい……」 熱くなってくるのは、太陽の光のせいだけじゃなくて。 このささやかな胸が、さっきから煩いくらい高鳴って、身体中が、熱くなる。 ニヤけていた相手校は、いつの間にか真剣な顔つきになっていて。 7回裏で、相手校の攻撃。 ここを抑える事が出来れば、井川君達の完封試合。 (頑張れ、頑張れ) 手に汗を握りながら見つめる先で まるでスローモーションの様に、相手校の4番バッターが美しい放物線を描くホームランを放つ。 それからは、緊張の糸が切れた様に次々と点を取られて。 7点を取られた時点でコールド負け。 ガックリとマウンドに膝をついた井川君が、天を仰ぐ。 キャッチャーの崎田くんが、気遣うように駆け寄って。 後はもう、溢れる涙で良く見えない。 割れんばかりの拍手に包まれながら、立ち上がる井川くん。
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