雨が降り出して

5/10
前へ
/103ページ
次へ
「だれか、廃材を焼却炉に持っていって。」 先程から一際忙しく働いている委員長が背中越しに声をあげる。 「はい。岡山と桜井が行きます。」 と桜井に巻き込まれる。 ヤツがじっと私を見るのでため息をついて視線で、分かったわよ。と答える。 「ペンキが足りないので、今日はここまでで看板の製作を終わります。委員長、追加発注をお願いします。これがリストです。」 と桜井がいつの間にか作ったリストを手渡す。 遊んでるようで要領良く仕事するんだよね。そこは本当に尊敬してしまう。 「分かったありがとう。じゃ、廃材よろしく。岡山さん、重いけど大丈夫?良かったら他の男子に頼むけど。」 と男前な委員長の言葉に思わず笑顔になり、うなずきそうになったけれど 「オレがこっちもつから、楓はコレ」 と軽そうなものだけ渡される。 「さすが桜井君。じゃ、後はよろしくね。」 感心した顔をして委員長が去っていく。 「ったく、楓はバカ力だから大丈夫だっつの。」 なんて小声で悪態をつきながらも重い物を持ってくれる桜井。 なんだかんだいい所もあるよね。でも素直にお礼なんて言ってあげないから。 「はいはい、どうせバカ力ですよー。」 と思い切り舌を出すと 「ブハッ、不細工」 って盛大に笑われた。 久しぶりに桜井が笑ってる。表の王子様スマイルじゃなくていつもの桜井の笑顔。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加