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私の通う学校は小学校から中学校へ持ち上がりで進級するので
転校生がいない限り顔ぶれが変わる事はほとんど無い。
男女の仲は本当に良くて、揉める事もほとんどないし
もう家族みたいな錯覚さえおぼえてしまう。
田舎の学校で1学年2クラスしかない小さな学校。
しかも周りは豊かな緑と美しい海に囲まれている。
「あー、本当に暇。なーんもないから、この街。」
親友の長谷川文乃が嘆く。
文乃は腰まである美しい黒髪をもて遊びながら、ため息をもらす。
どこから見ても美しい彼女。
印象的なアーモンドアイが際立ち、スレンダーな体型も相まって某女優さんにとても似てる。
この街には確かに都会の様な娯楽は何もない。
だけれど、人は暖かいし何より大好きな海が毎日遊び場になる。
「そう?私は結構好きだよ。」
とかえせば、アンタは海があればご機嫌だもんね。
といつもの様に呆れ顔で見てくる。
海は好きだ。
天候によってその色彩と表情を変える様は例えるなら女性と似ていて掴み所がない。
私の父は船乗りで1年の大半をそんな海の上で過ごすし、
父が帰れば良く海へ連れて行ってくれる。
いつも側に居なくても、海は父の元へ続いている。
そこではきっと元気でいるとそう信じることができるから。
そんな気持ちも手伝って、海を愛するこの気持ちは未だ無くした事はない。
きっとこの先も。
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