お客様は神様

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 翌日、昨夜のショッキングな出来事を教えようと友美に声をかけると、驚いたことに彼女が先に話を切り出した。 「あっ、杏奈(あんな)。あんたんとこの店、すごいじゃん」 「えっ」  ニヤニヤしている友美をよそに、私はポカンと口を開けていた。どうやら私が何のことかさっぱり分かっていないと察すると、友美は呆れたように首を振った。そしてバッグから携帯電話を取り出すと、(おもむろ)にこちらに見せてきた。  そこには昨日の似非関西弁のチンピラが映っていた。 「俺は間違えてねえよ。そっちの勘違いだろうが」 「ああ! 申し訳ありません、お客様」  威勢のいい男に対し、何とも情けない店長の声。頭を床にこすりつけて許しを乞う店長の姿に、私は何ともやるせない気持ちになった。 「杏奈も映ってるよ」  そこにはたしかに、なすすべなく冷めた目で(たたず)む私が映っていた。まさに言葉通り、店長を見下しているようだった。 「なんかその店に行ってない人まで高評価してるらしいよ」 「えっ」  私は再び驚いた。友美によると、動画が拡散されてから、店長のあまりにも腰の低い態度、そして憐み半分で店の評判は爆上がりだという。  私はすぐさま店のレビューを開いた。たしかに友美の言う通り、5段階評価でなんと4.5以上の評価を獲得している。そして驚くべきはレビューの母数だ。昨日一日で3桁を越している。 「これ見て。店員もかわいい、だって」  再びニヤニヤと笑みを向けてきた友美から私は視線を逸らしたが、満更でもない気持ちだった。
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