お客様は神様

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 私は店長の秘密を探るスパイのようで内心ワクワクしていたが、やはり肝試しのようで怖さが勝る。そして結末も肝試しにふさわしいものだった。  ゆっくり扉を開けると、外はまだ明るいはずなのに部屋の中はやけに暗い。私は店長がいた部屋の隅まで友美を導いて、さらにゆっくりと歩んでいった。隅に近づくと、そこには不自然にポツンと椅子が置かれてあった。それから目線を上に向けるとどうやら神棚があるようだ。 「ちょっとやめなよ」  椅子に足をかけた私を今度は友美が制した。しかしここまで来た私はもう好奇心を抑えきれなかった。神様の正体は何なのであろう。  ゆっくりと両足で椅子に乗りきり、神棚に手をかけた。そして目を凝らすと、神棚の奥に何やら木彫りの像が見えた。仏像であろうか……?  私は恐れ多くもその木像に手を伸ばそうとしたその時……。 「何やってるの?」  突然背後から声をかけられ、私はビクッと飛び上がり、椅子から転げ落ちそうになった。何とか踏ん張って体を支え、扉の方に目を向けるとそこには首を傾げた店長が立っていた。薄明りに浮かび上がるその顔は、目尻が垂れ、微笑をたたえている。私は殺されると思った。 「杏奈ちゃん、そろそろ開店の準備を始めて」  しかしそれは杞憂に過ぎなかった。店長の口から出たのはとりとめのないことだった。 「は、はい」  私は声にならない声を発し、友美はわれ先にと店長の脇を通り抜けた。しかし私が通り過ぎようとした時、店長はボソッと小声で尋ねてきた。 「杏奈ちゃんも見えたの? が」  私はピタリと立ち止まって彼を見た。口角をこれでもかと言わんばかりに上げ、いつもは見えない瞳が見えている。私は背筋に悪寒が走り、何も答えず階段を駆け下りた。
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