真夏の夜の悪夢

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2020年、夏。 その夏は例年の夏とは違う、特別な夏だった。 新型コロナウイルスの蔓延、異常気象、連続する猛暑日。比較的気温の低い北にある大地もその年の暑さには悩まされた。 そしてどこかで別の誰かもある異常に悩まされていた。 「いったいなんなの!?このにおい!!」 住宅街にある古アパートの3階に住む女性は、台所に立って地団太を踏んだ。口と鼻に何重にも重ねたティッシュを押し付け、眉間にしわを寄せる。 ここ数日、40度を超える猛暑日が続き、排水管から異臭が逆流しているのかと思って一生懸命漂白剤を撒いていたのだが、どうやら原因は排水管ではないらしい。生ものが腐ったようなひどい悪臭だ。しかし、冷蔵庫や部屋の中を確認してみても生ものなんて見つからない。生ごみも今朝の可燃ごみで全て捨てたし、生ごみ用のバケツも漂白剤に浸けて臭いを除去した。それなのに、どこからかにおいがする。
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