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夕陽は窓から横に差し込み、廊下を照らしていた。
私は、できるだけゆっくりと廊下を歩く。チャイムを止めるための、時間の猶予があるように。でも、放送室はすぐそこなのに、チャイムは鳴り止まない。
気味の悪い雰囲気だったかって?
そんなことはない。ただ、ひどくひんやりとしていた。
この分厚い防音扉の向こうは放送室。いつもは、扉は固く閉じて鍵がかかっていて、鍵は厳重に管理されているらしい。噂では、放送機器はすごく高級なものだと聞く。
はたして、防音扉の密閉ハンドルは半ロック状態で、扉は少し引っかかって開いていた。チャイム音は、なり続けている。
私はハンドルに手をかけた。
ハンドルは手の重みで少し動いて、扉の重みでガチャリと閉じた。
その瞬間に、鳴り続いていたチャイムはピタリと止んだ。
「しまった!」
扉の向こうに、びっくりした反応が何となく想像された。
何だろう、この気まずい雰囲気は。
扉を遠慮がちにノックする。もう一度強く手の甲で叩く。
誰も返事をしてくれなかった。
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