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「――私がフッたんだよ、アイツのことを。それでも諦めきれなかったアイツが私のことをストーカーし始めた。」
言ってしまえば、単純な話だ。よくあるストーカー理由だ。
当時は怖かった。通学中、下校中、常に後ろからついて来る上に、学校ではすれ違うたびに睨まれる。機嫌が悪くなればどこにいても殴られ蹴られる。
体のいいサンドバッグみたいなものだったのだろう。
そんな調子で学校に行くのが嫌になり行きたくないと思ったときもあった。
それでも、私がここで不登校になるのはお門違いだと思いなんとか通い続けた。
私は毎日学校が楽しくて仕方ない、と自分の感性を歪めてまで、私は間違ったことをしていない、という自分の正義を貫いた。
その結果が今回の事件なんだろうな。
「辛くなかったか?」
そう陸久が訪ねてきた。
「辛かった、のかもしれない。でもよくわからないや。」
「そっか、もう少し早くに気づいてあげれればな。」
自分を攻めるような口ぶりだった。全くこの人はどこまでお人よしなんだか。
「ところで、君はなにか私に有益な情報を持ってるのかい?」
聞いた瞬間、陸久が固まった。急に焦りだして、考え出している。
どうやらなにも持ってないようだ。
その様子を見て、思わず笑ってしまった。焦ってる様子があまりにも可愛く、なんだか犬のように見えてしまったからだ。
それに気づきムッとした陸久が
「なんだよ。」
と不貞腐れたように言う。その様子もまた可愛い。
「別に、なにも情報ないんだーって思っただけ。」
「あるはず、ちょっとまって、必ずどこかにあるはず。」
そう言ってまた悩み始めた。
私はしばらく、ただなにもせず蝉の声と風の音に耳を傾けてた。
今日は夏休み終了一週間前だから、どの部活も課題消化日として休みなのだろう。美術部はその消化日が前半にあったから、今日は活動があったのだ。
美術部を除いてすべての部活が休みなので、学校はとても静かだった。
それこそ、風と蝉の音が際立つくらいには静かだった。
静けさを破ったのは、陸久の”あっ。”という声だ。
「思い出した、ちょっと気になったことがあったんだ。」
「気になったこと?」
思わず聞き返してしまった。
学校で気になることがあるということはそれなりの違和感のはずだ。普段皆は小学校からの同級生なので、お互いを熟知している。だからこそ、なにが言いたいかもわかるしだれと一緒にいればいいかもわかる。もちろん、誰が敵で誰が味方かも理解してる。
だから、違和感なんてそうそうでない。常にいつも同じ塊がそこにあるだけだから。
「そうそう。少し気になった噂を聞いてね。」
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