部活の記憶

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部活の記憶

「こんにちは~」 いつも通り、先輩に声をかけるが返事がない。 どうやら今日は私が一番乗りなようだ。                                 窓を開けて5月の心地よい風を取り入れ、雑巾がけを始める。部活内―剣道部―の決まり事で、一番はじめについた人が部室を掃除することになっている。 私はこの時間が好きだから、いつも早めに来る。そう考えれば、先輩から返事がないことも通常運転か。 のんびり掃除をしていると、清々しいほどムカつく嫌いな声が聞こえた。 「先輩、こんにちは!!」 同級生の部員が来たようだ。 この声を聞くだけで、悪寒はするし、吐き気がするし、体調が悪くなる。                  中学生にしては少し高めの声変わりを迎えていない声を持つその少年―梶谷正也―はドタドタと入ってきてこっちを睨んできた。 私はいつものこの行動に慣れてしまったのだろう。何事もなかったかのように雑巾がけを続けた。 それが気に食わなかったのだろう。少年はいきなり私の腹を蹴ってきた。 「ゲホッゲホッ……っつ」 気が済んだのか、何事もなかったかのように更衣室に向かっていったみたいだ。私が顔を上げたときには既にいなかった。 代わりに、別の同級生が心配げに覗き込んでいる。 「気にしないでいいよ、いつものことだから。」 なんとか表情筋を動かし精一杯の平気さを装いながら部室をあとにし、トイレに駆け込む。 …………また、お昼ごはん無駄にしちゃったな。 そんな事を考えながら、雑巾を洗い私も着替え始めた。 『よくあんな毎日に耐えてたもんだよ。』
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