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大人の都合
病室に来て数日が経ち、少しずつ何があったか思い出した頃一人の男性と少年が病室にやってきた。
その少年を見たときはっきりと思い出した、自分に何があったかを。
胡散臭そうな顔をした担任のS先生が口を開いた。
「今回は災難だったね、まさかタイヤが倒れてくるなんて君も思ってなかったでしょう?」
…………………は?この男は何をほざいているんだ?
「でも良かったね、梶谷くんが応急手当で傷口をすぐに圧迫してくれたのが効いたのか後遺症もほぼないらしいしね。
梶谷くんにお礼行っときなさいよ。ところで…」
この男は何をさっきから言っているんだ?どこから否定すればいいんだろうか?
寝言は寝てから言え。
「違います、ほんとはこいつが木刀で殴ってきたんですよ。朝練のときに」
その言葉を遮るかのように私が言い切る前に梶谷が言葉を重ねた。
「命の恩人にその言い分がないよ~。それとも頭打ったときに記憶までおかしくなったのか?
たしかに俺はお前に色々やったけど、そんなことはしないよ。」
「まだ少し混乱してるのかもな、目覚めて数日しか経ってないらしいし。もう少ししっかり休めよ。
学校のプリント類は誰かに届けさせるし、ノートも見せてもらえるように言っとくから、必ず体調を万全にしろよ。」
そんな言葉を一方的に残して、二人は帰っていった。
何なんだろう、今の茶番は。先生たちの中では、私はタイヤが倒れてきた衝撃で地面に頭を強打したことになってるのだろうか?
何をどうしたらそうなるんだ。当の本人の意見を聞かずに、あったことをまとめてしまったのだろうか?
疑問しかない、なぜこういう事になったのか。否、大体想像はつく。
しかしそれを信じると大人が、学校がいかほどに利己的に動くかを認めてしまうことになる。
でも、この状況ではこれしか考えられない。
『大人が都合よくことの自体を持っていこうとした、としか考えられないな……』
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