(二)

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 気づくと僕は病室から駆けだしていた。病院を飛び出し、地下鉄の入口まで走って行った。階段を転がるように降りて行った。自動改札を抜けた。ちょうど来ていて発車ベルの鳴っている列車に飛び乗った。乗る寸前にドアが閉まり始めていたが、ドアに挟まれたところを無理矢理ドアを押し開いて乗ることができた。横長の座席はところどころ空いていた。でも座れなかった。心が落ち着かなかった。だからその場で立っていることもできなかった。僕は乗った場所から進行方向へと向かって歩いて行った。揺れる車内で時々バランスを崩しそうなりながら、早足で歩いていった。そして先頭車両までくると、今度は足早に逆方向に歩いて行った。 (続く)
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