ふたりの写真

（四）

　僕はそれから部長に許可をもらって毎日仕事を定時で退勤し、夕方に病室へ向かった。面会時間が終わるギリギリまで未来子さんの隣にいた。彼女のベッド用のテーブルには、食事の時以外は僕たち二人の姿が写った結婚式の写真を置いた。四ツ切りサイズに引き延ばしたものを額縁に入れたものだった。
　僕たちは特に会話を交わすこともなかった。その写真と、二人が一緒にいるだけで十分だった。
　そうして三日経った日の夜、ナースコールボタンを押すことになった。そして、彼女は病室で撮ったウェディングドレス姿の写真を胸に抱いたまま、僕の目の前で、穏やかに息を引き取った。

（了）