(一)

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 ホテルの部屋から出るときに、僕は未来子さんにプロポーズした。ストレートに「結婚して下さい!」と。高性能なストップウォッチですら計測できないほどの短い間を置いてから、未来子さんは「ごめん、ありえないから」と力強い返事をくれた。  会社に出勤し、二人きりになるチャンスを見計らっては、僕は未来子さんにプロポーズした。給湯室で、女性用トイレの前で、彼女に呼ばれてデスクの前に行った時、そして退勤するとき。僕は「結婚して下さい!」って頭を下げた。  結果として「(はし)にも棒にもひっかからない」とはこのことかと、この日初めて思い知った。言い方を変えても何度言ってもダメだった。 (続く)
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