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誰を見てもごく普通の一般人に見えた。クスリなんてやっているようには見えない。それどころか、どこにでもいる人だ。暴力団と言われた二人の写真もテーブルに並べられたが、見た目はちょっとヤンチャなお兄さんと、不愛想な男の人…くらいに見える。これが暴力団とは驚きだった。
次に口を開いたのは江原だ。
「そういえば岳…井上雅春が昨日動いたぞ。どうやら東京に向かったらしい。フェリーに乗って新潟へ向かった」
「新潟?」
「舞鶴で降りると思ったんだけどな、意外なことに新潟で降りたらしい。向こうの刑事が尾行を続けてる。おそらく東京で商売でもしに行ったんだろう」
江原が言うと、岳が首を傾げた。
「それはおかしいですよ。さっきも言った通り、クスリの売買の前に俺が偵察に行くのがルールです。おそらく別の便で誰かがブツを持っていくんだと思います。その辺もチェックした方がいいかもしれませんね」
岳の意見に江原は頷いた。
「そうだな…引き続き監視をさせよう」
だいたい重要な話を終えた後、ふと野本が口を開いた。
「それにしても彩羽さん、なぜあなたは岳と知り合いなんですか?」
彩羽は一瞬戸惑ったが、隠したところでいずれ話さなくてはいけない事だろうと思い、播磨伊織が会いに来たことを話すことにした。
そして、その時播磨伊織が手渡していったメモを見せた。
「職場に伊織が来たんですか?」
野本が驚きながらメモを見た。
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