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野本はメモに書かれている戸田清司の名前を見て、先ほど雅春の同級生だと岳が言っていたことを思い出す。
「私だって仕事中に来られたもんだから逃げるに逃げられなくて困ったんだよ。だけど別にナイフを持ってるわけでもないし、人の目もあるから何もできないだろうと思って普通に振舞ってたけど」
「なぜその時に連絡してくれないんですか?」
なにやら責められているようだ…と思いながら彩羽は頬を膨らませる。
「だってさぁ…あいつが言ったんだもん。警察関係者だってバレたらおしまいだって。真実は闇の中だって」
「だからって一人で行くなんて無謀にも程がありますよ」
「分かってるよ。本当は行くつもりもなかったんだもん。だけどさ…なんかあいつに言われるとカチンとくるんだよね……。なんだろ、このライバル意識みたいな変な感じ。バカにされてるみたいで腹立つんだよね」
まるで子どものケンカだ。
野本は呆れながら首を横に振った。
その様子を見ていた岳が彩羽の肩に手を回して抱き寄せた。
「でもまあ、今後は俺が恋人という立場で彩羽の事は見守るんで大丈夫だよ、野本さん」
岳が野本を見て白い歯を覗かせながら笑うと、野本の目が一瞬で細くなった。
「一番信用できないんですよねぇ…独断で突っ走るヤツなんて厄介者でしかないですし」
それを聞いた彩羽は野本と岳を交互に見て、「二人って同期なの?」と訊いた。
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