425人が本棚に入れています
本棚に追加
岳は「同期ではないよ」と、答えた。
「年齢的にもキャリア的にも野本さんの方が上。でも刑事課に配属された時期が同じくらいだったかな。野本さんの方が少し早くて、その後に俺が」
「ああ、そうだ」と、思い出したように声を上げたのは江原だ。
「杉林も今北海道に来てるぞ。お前の先輩だったろ」
岳は杉林という名前を聞いただけで眉間にしわを寄せた。
「えぇー!会いたくないですよ。相変わらず変人なんでしょう?あんな中性的なイケメンがいていいのかって思うほどイケメンなのに、根暗すぎてついていけないんですよねぇ。ぱっと見、ロックバンドのボーカルとかやってそうなのに」
「おう、今も完全密閉された個室で一人黙々とパソコンと睨み合ってるよ。俺はあいつが結婚するって言ったら腰抜かして驚くだろうな」
「それは同感ですよ。杉林さんについていける女性なんていないですって」
後半は割と昔話と悪口大会になっていたかもしれないが、それでもお互いにとって収穫はあったようだ。
「そろそろお暇しましょうか。架音さんや美乃梨さんも帰ってくるでしょう?」
野本がそう言ってテーブルの上にある写真などを集めてポケットにしまいながら立ち上がる。すると、「ええーやだ!マリアさんが帰って来るまでいます!」と、愛音が駄々をこね始めた。
「いやぁ…マリアさん、今日も夜遅くなると思うけど。お姉ちゃんが今まだお休み中だから、その分マリアさんが働いてるんだよね」
最初のコメントを投稿しよう!