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「さっきのって…IORI?」
野本の背後に立っていた彩羽が訊いた。その表情は怯えているようにも見える。
「IORIって…例の播磨伊織?」
彩羽の横に立っている葉月が訊く。
野本は髪をかき乱しながら大きなため息を吐いた。
「間違いありません。播磨伊織です」
そう言いながら先ほど通路に落とした荷物を持ち上げた。そらも同様に荷物を持ち上げ、野本を見る。その瞬間、クリア板越しに1階フロアの様子が視界に映った。もう一度、野本から1階へと視線を落とすと携帯を構えた複数の人々がこちらを見ているのが見えた。明らかに動画に撮られている、そう感じた。
「野本さん、まずいですよ。移動しましょう」
そらは慌てて葉月と彩羽の背中を押しながら通路を歩き出した。しかし、1階だけを気にしていたのは大きな間違いだった。すでに四方八方から注目されている。背後からついてきた野本もようやくそのことに気付いたようだ。
4人は予定していたコースとは別のルートを辿ると、結局そのまま駐車場に向かい、車に乗って葉月たちの自宅へ帰ることになった。
「せっかくステーキ食べれると思ったのに、あいつのせいで台無しだよ」
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