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後部座席で彩羽が悔しそうに言った。
今日は葉月の退院日だった。本当はもう少し早く退院する予定だったのだが、病院側で手違いがあったらしい。その知らせを聞いた野本たちが休憩時間を合わせて食事にでも行こうと誘ったのだ。彩羽が「ステーキが食べたい」と言うからみんなで行こうと待ち合わせをし、その店に行く途中で播磨伊織と鉢合わせしたというわけだ。
この展開は誰も想定していなかった。
「あの……」
後部座席に座っていた葉月が口を開いた。
「さっき播磨伊織が言ってた言葉の意味って…どういう意味ですか?お父さんが死んだ…とかなんとか?」
助手席に座っていた野本の眉がピクリと反応を示した。
「おそらく…私の父親の事を言っています。あいつは私のことまで調べ尽くしているみたいですね」
「まあ…彩香さんが亡くなった時点ですでに野本さんの事は調べがついてたんじゃないの?」
彩羽は恐れることなくそんなことを言ってのけた。
そらも葉月もヒヤヒヤものだ。その言葉は受け止めようによっては『野本のせいで彩香が死んだ』と捉えられてしまう。
しかし野本はそれほど過剰な反応は見せなかった。
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