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思わぬ返信に彩羽は「はあ!?」と、声を上げて椅子から立ち上がった。リビングでテレビを見ていた架音と美乃梨がダイニングの椅子から立ち上がった彩羽を見て目を瞠っている。
『しかし隠し事ができない姉妹だな…』と、感心している様子だ。
数時間前、葉月はボストンバッグいっぱいの荷物を詰めて「仕事が溜まってるからしばらく職場に泊まり込むわ」と言って出て行った。架音や美乃梨から見ても嘘だというのはバレバレで、おそらく詩音の家に泊まりに行くのだとすぐに分かった。
入院期間が長かったのと、感染者数が少し落ち着いているのもあるのだろう。
しかし、ここ最近、オミクロン株などという新しいタイプの株が世界で流行を始めたのは確かで、日本にその株が入ってきたら一気に感染者数は増えると予想されている。おそらくその前に会っておこうという魂胆なのだろう。
架音と美乃梨は顔を見合わせて肩をすくめながら、いつものように漫画の本を読み始めた。
一方彩羽はというと、携帯の画面を見ながらわなわなと震えていた。
まさかあの日、家まで尾行していたとでもいうのだろうか。なぜ家を知っているのだろう。
『困った……』
彩羽は頭を抱えてテーブルに顔を伏せた。
―――
その日は眠るに眠れなくて、彩羽はベッドの上で何度も寝返りを打ちながら息を吐いた。あの得体の知れない男に家を知られるなんて最悪のパターンだ。どう考えたってまともな男じゃない。もしも家族が犯罪に巻き込まれたらどうしよう……。
そんなことばかり考えてなかなか眠りにつけなかったので眠剤を追加して飲み、携帯ゲームをしながら気持ちを落ち着かせる。
すると、気付かない間にあっさりと眠りに落ちていた。
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