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『それはぁ…まあ、そうだよね。練りに練った計画を実行して、証拠を残すことなく逃げ切ったんだ。これまでのどの計画よりもあの殺人は興奮したよ』 自分の声を聞きながら播磨伊織は指を這わせ、別のジーンズに手を伸ばす。 『私も見たかったわ。あの女の死にゆく様を』 『俺がやらなければ君が()っていたかもしれないね』 『それはないわね。私はリスクを冒さない。女の力じゃ証拠を残さず、確実に、スピーディーに殺人を犯せるか分からないわ。それに相手はあの…折原よ。あんな予言者みたいな女、私の顔を見た時点で何かを察するに決まってる。顔を合わせることなく殺人に辿り着けるのなら実行も考えたかもしれないけど、あの女の周りには警察関係者もうろついているし下手に行動なんてできないわ。あなたみたいに真冬の寒波の中、自転車に乗って山奥まで殺人を犯しに行く体力なんて私にはないしね』 ふと、真横を若い男性が通ると、伊織は上着のポケットからスマートフォンを取り出し、再生されているデータを音声データから音楽に切り替えた。
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