426人が本棚に入れています
本棚に追加
靴を履いた後、改めて大きなため息を吐くと、シューズケースの上に置かれている50枚入りマスクの箱から一枚不織布マスクを取り出した。
「行きたくねぇ……」
呟きながらもマスクを装着して玄関を出ると、鍵をかけて階段を下りた。
贈答品店の駐車場へ向かうと見覚えのある車があった。しかも運転席にはマスクもしていない髭を生やしたスマートなイケメンが乗っている。しかしまあ、目つきが悪い。その上、今日も黒っぽいスーツを着ている。もう刑事かヤクザにしか見えないのだが……。
彩羽はもう一度大きなため息をついて車に近づいた。
すると向こうも彩羽の存在に気付いたようだ。
さっきまでとは打って変わって笑顔を向けられた。
「いや…爽やかすぎんだろ」
思わず突っ込んでしまう。
戸惑いながら助手席に向かうが、そういえばここのドア、閉まったら内側から開けられないんだよな…と改めて思い出す。だから後部座席のドアを開けたが、すぐに岳から言葉が返ってきた。
「後ろもチャイルドロックかかってるよ」
「のぉあ……!」
どっちに乗っても逃げ場ないじゃん!と、思わず岳を見て目を細めた。
「嫌がることはしないから早く助手席に乗りなさい」
「そんなこと言ったってこないだは無理やりキスしたじゃん!」
「そんなに嫌がってなかったと思ったけど?」
最初のコメントを投稿しよう!