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「嫌がってたでしょうが!全力で!自覚ないわけ?」
彩羽の攻めの言葉に岳が声を上げて笑った。
「分かった、分かった。早くこっちに乗って」
ポンポンと席を叩かれて仕方なく彩羽は助手席のドアを開けた。
「絶対に何もしないでよ」
確認するように言うと、岳は笑顔を浮かべながら数回頷いて見せた。
信用しているわけではないが、ここでこんなやり取りをしているのも時間の無駄だ。さっさと出かけてさっさと帰ってきたいところだ。
彩羽は仕方なく助手席に乗ってドアを閉めた。
シートベルトをしようとすると、岳が顔を近づけてきて彩羽の手からシートベルトを取り、はめてくれる。
「会いたかった?」
どうやら質問されたようだ。
彩羽は「別に、全然。むしろ会いたくなかった」と答える。
「じゃあなんでここにいるの?」
そう訊かれると彩羽の顔が引きつる。
「いやいや…じゃあなんで家を知ってるわけ?あの時尾行したの?家まで知られてて何やらかすか分かんない相手を無下にできないでしょうが」
彩羽が言い返すと岳は笑った。
「ごめん、ごめん。部下に調べさせたんだよね。どうしても彩羽のこと知りたくて」
突然名前呼びされて動揺する。
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