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名前を知っているのは分かっている。なぜなら彩羽のラインは下の名前の『彩羽』で登録されているからだ。しかし、名前で呼ばれるのは慣れないものだ。
「もうこのやり取りいいよ。早くお店行こう」
彩羽が言うと岳は車を発車させた。
しかし車が動き出すと同時に彩羽の脳裏に疑問が浮かぶ。
『部下って誰?普通、職場の部下に人の家調べさせないよね?』と思う。
チラッと岳を見ると、白い肌が髪や髭の間から見えた。真っ白で日焼けなんて言葉知らなさそうなきれいな肌だ。
うらやましいな…と思いながら小さくため息を吐き、俯いた。
「なに?俺の横顔見て惚れた?」
ふと、岳がそんなことを言った。
「誰が惚れるか。そんな簡単に人を好きになるキャラじゃないんで」
「まあ、その方が俺的にはありがたいね。他の男にとられるくらいなら俺が手に入れたいし」
どんな殺し文句だよ…と、思いながら彩羽はまたため息を吐く。
「っていうか…岳さんってほんと何者なの?」
「それ聞いちゃう?」
言い渋っているのか、岳はふざけたようにそう言った。
「だって、相手のこと何にも知らないで好きにはならないでしょ」
「それはまあ…そうかもねぇ。でも知ったらドン引きされそうだから今はまだ言わない」
「ドン引きされるような職業なわけ?」
「多分間違いなく引く」
岳は自信ありげにそう言って笑った。
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