426人が本棚に入れています
本棚に追加
「確信したのは今さっき。店から出てきた人たちがケガしてないのを確認した時かな。でも…初めてマスクを外した時になんとなく気付いたかも。悪いことしそうな顔に見えなかったから。むしろ、正義のために目を光らせているタイプだと思った」
岳の顔が近づいてくる。
「俺が何のためにこんなことしてるかも知ってるのか?」
「さあ……?でもきっと、野本さんのお父さんの事件と関係あるんだよね?」
「それも知ってるのか……」
岳の口唇がわずかに頬に触れた。
「でも、知らないこともあるよ」
彩羽が言うと岳が彩羽の顔を覗き込む。
「なに?」
「…どうして私に近づいたの?」
岳はいったん彩羽から顔を離し、座席に寄りかかった。
「俺はもともと警視庁の刑事だった。かつて官僚だった人物の息子と暴力団が繋がっているという話を聞いて警察官をやめて暴力団に入った。日本の警察は潜入捜査なんてなかなかやらないからな。そしたら暴力団の中で移動を命じられて札幌に飛ばされたんだよ。もう5年この世界にいるけど、分かった事には限りがあった。俺はもう警察官じゃないから、欲しい情報が手に入らなかったんだ。そんな時、昔世話になっていた先輩から連絡を貰った。22年前の事件の再捜査が行われるって」
「22年前?…野本さんのお父さんの事件?」
「あの事件では4人の警察官が死んでる。あの当時、俺の面倒を見てくれた刑事も殺されたよ」
最初のコメントを投稿しよう!